5. 超高精度と生産性を両立させた液浸露光装置「NSR-S635E」

2018年に発売された「NSR-S635E」は、最先端の半導体製造に求められる極めて高い重ね合わせ精度と生産性の両立を実現しています。これを可能にしたのが、「Streamlign Platform」と高機能アライメントステーション「inline Alignment Station(iAS)」です。

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Streamlign Platform

2008年からニコンの半導体露光装置に採用され、国内外から高い評価を受けてきたニコン独自のプラットフォームです。3つの特長により、重ね合わせ精度と生産性の両立に加え、稼働率の飛躍的な向上も可能にします。

特長1 Bird's Eye Control

露光に際して、ウェハはステージに載った状態で投影レンズの下へ搬送されます。このステージの動きを精密に制御することは、重ね合わせ精度を左右する重要な要素の1つです。
Bird’s Eye Controlでは、高精度エンコーダでステージ上のスケールを真上からダイレクトに計測。干渉計と組み合わせたハイブリッドな計測システムとすることで、最適なステージパフォーマンスを実現します。さらに、レチクルステージの位置計測にも二次元エンコーダを採用し、各ステージの位置計測における空気揺らぎの影響を低減。高度なフォーカスコントロール制御に加えて、精度と安定性も大幅に改善しています。

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特長2 Stream Alignment

半導体露光装置には精度だけでなく、生産性との両立も欠かせません。これを実現したのがStream Alignmentです。
ウェハの直径をカバーできる幅広いビームスパンを持ったストレートラインAFで、ウェハ表面を一気にマッピング。露光時に不可欠なフォーカス制御の改善と高速化を実現しました。さらに、FIA(Field Image Alignment)を5眼化することで、生産性を確保しながらアライメント計測点数を増やし、さらなる高精度な計測も可能にしています。

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特長3 Modular2 Structure

「史上最も精密な機械」とも呼ばれる半導体露光装置は、立上げやメンテナンスにおいても高度な技能が要求されます。そこで、現場での迅速な対応を可能にするために考案されたのがModular2 Structureです。
装置全体をユニット単位でモジュール化することにより、立上げに必要な期間を劇的に短縮。細かいパーツの交換にも対応し、メンテナンス性を大幅に改善しました。これらにより装置のダウンタイムロスが削減でき、稼働率の向上に大きく貢献します。 また、拡張性の高いプラットフォーム設計を採用したことで、装置のアップグレードも可能となります。

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高機能アライメントステーション「inline Alignment Station(iAS)」

ウェハの表面には肉眼では確認できないようなグリッドの歪みが存在し、ナノメートルオーダーの回路を重ねて露光する上で、これらを補正することが極めて重要になります。
ニコンは独自の技術を駆使してアライメントステーション「inline Alignment Station(iAS)」を開発し、「NSR-S635E」に搭載。露光前の全てのウェハに対して、グリッド歪みの絶対値を高速かつ高精度に計測し、補正値を算出して露光装置にフィードフォワードすることで、今までは不可能だったウェハごと、ショットごとの高精度な重ね合わせ補正を可能にしました。

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